本日の気になる新聞記事として、読売新聞朝刊11面「Q&A為替介入 財務省が決定、日銀が実務」を挙げたい。
本日は朝刊各紙1面にて、政府・日銀が円売り・ドル買いの為替介入に踏み切り(米欧市場含み1日で2兆円規模)、東京市場での円高・株安の流れにひとまず歯止めがかかったといった内容が掲載されている。
今回の介入の時期は、「意表を突くタイミング」(邦銀ディーラー)だったといえ、投機筋も一旦、円を売りドルを買い戻した模様である。輸出主導型の日本経済にも少しではあるが明るい兆しが見え始めたのかなとも捉えることもできる。ただし、この流れが続くかどうかは不透明である。欧米経済は以前不透明感が漂い、自国通貨安を促すことで輸出を拡大し景気悪化に歯止めをかけたいのが欧米諸国の本音。今回も日本が単独での介入に踏み切ったのは、他国とともに介入する「協調介入」の支持は得られず、タイミングを見計らないながらの選択となったに違いない。
今後、1ドル=82円台が介入の節目といえる。再び円高に向かった場合であっても、82円台を割り込み80円突破という恐れはかなり遠のいたのではないだろうか。ただし、本年においてスイスが介入で失敗したような例(スイス・フラン高ユーロ安の流れを止められなかった)もあるため、為替取引(FX等)には十分注意したいところである。
さて、ここで為替介入の方法について解説したい。実際には、財務省が為替介入のタイミングや金額を決め、日銀に指示を行うことで実施される。今回実施されたパターンは以下の通り。
円安に誘導するために、政府が政府短期証券(FB)を発行し、市場から資金を集めることで民間の金融機関が保有するドルを買い入れる(実際には日銀から円資金を借りて、後ほど政府短期証券を発行し調達した資金で返済する)。この結果、市場において円が放出されることとなり、市場で円の量が増えることは金利低下の要因となる。
今回は市場に放出した円をあえて回収しない『非不胎化(ひふたいか)介入』をとることで、上記のように金利低下、すなわち金融緩和と同様の効果をもたらすことになる。ちなみに、介入で市場に放出された資金を、日銀が公開市場操作により短期間で資金を回収する場合は『不胎化介入』と呼ばれる。今回は非不胎化介入とすることで、金利を低下させ、日米金利差を拡大させる役割をもたせることで、為替介入に一層の効果を持たせた円安ドル高への誘導を行ったと考えられる。
執筆者:伊藤 亮太(ファイナンシャルプランナー)
スキラージャパン株式会社
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